海苔ささみピザパン

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帰省

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   高知県の空は広い。澄んだ空は真上に行くほどその青色を濃くしていく。その色のグラデーションが青い風船のようだと昔から常々思っていた。膨らませたゴム風船は膨らまし口に比べて頂上辺りの方が伸びきっておらず色が濃い。青く澄みすぎた空を見ていると、自分が巨大な風船の中にいるようで、いつその風船が破裂してもおかしくないような気がして恐ろしくなる。巨大な風船よりもっと巨大な何者かが巨大な針でプツ、と風船を刺して、一瞬のうちに空が、もしかすると世界全部が、縮れたゴムの切れ端になってしまうのだ。

 

  本当に世界が巨大な風船なら、世界の終わり方には2種類しかない。少しずつ空気が抜けてしぼんでゆくか、破裂である。子供の頃読んだドラえもんの教育漫画には、宇宙は徐々に膨張しておりいつか破裂するかもしれないと書いてあった。この世界は今、終わりに向けてしぼんでいるのだろうか、それとも膨らんでいるのだろうか。あるいは完全に静止していて、何者かのとどめの一刺しをじっと待っているのかもしれない。

 

 帰省を終えるために高速バスに乗る直前、もう一度空を見上げると、その色は青く濃く、雲は油絵の具を散らしたようにハッキリと青との境界を示していた。相変わらず人工物みたいに完璧な空だった。昔からあまり好きではない地元の空だけど、今は少し、名残惜しい気持ちがしないでもない、気がした。

 

   約5時間の旅の道中私はほとんど眠り続け、目を覚ました時には既にバスは大阪市内にいた。窮屈な座席から外を見るとビルの群れが立ち並び、その間を埋めるように塗られた空の色は灰色がかった白色だった。大阪は曇りか。頭の中でひとりごちる。

  明日からはまたひとりで都会を生きねばならないのだ。世界を内包する巨大な風船が破裂しようとしぼんでゆこうと私には何の関わりもないということを、大人になって知った。