海苔ささみピザパン

いろいろです Twitter@kame_kau

知ることによって

 私は、20歳になったばかりの頃、アホのようにお酒を飲んでいました。バイト終わりにコンビニで200ml入りのウィスキーを買ってきて、それを氷も何もなしに1/3ずつコップに注いで、一気飲みしていました。

 私はお酒に強く、そんな飲み方をしてもせいぜい楽しくなってゲラゲラ笑って寝るくらいで、次の日にはケロっとしていました。ひとり暮らしの家で深夜にゲラゲラ笑っている時点で尋常ではないと、今では思っています。

 そんな飲み方を辞めたのは、ある知人に「それ普通に急性アルコール中毒で死ぬやつだよ」と注意されたことがきっかけです。私は、本当にそう言われるまでは急性アルコール中毒のキの字も思い浮かべたことはなく、お酒を飲みすぎたら死ぬことがあると知識では知っていたものの、まさか自分の行為がそのような危険性を持つものだとは想像もしていませんでした。私は大変な衝撃を受け、そして死ぬのが怖くなったため、ウィスキーの一気飲みを辞めました。

 

 また、私は保育園児だった頃、ジャングルジムに登るのが好きでした。ジャングルジムのてっぺんに何の支えもなしで立ち上がるのが、特に好きでした。でも、今はもうそんなことは出来ません。それは、私が「そんなことをすれば落ちるかもしれない」「落ちたらただではすまない」ということを知ってしまったからだ、と思います。保育園児だった頃の私は、自分がジャングルジムのてっぺんから落ちる可能性なんて微塵も考えていませんでした。だからこそあんなに上手にバランスが取れたのでしょう。大人になった今、同じことをすれば、少しでも「落ちるかもしれない」という恐怖が頭をよぎった瞬間に、本当に落ちてしまうのではないかと思います。そして、落ちることが怖くて、私はもうジャングルジムのてっぺんに立つなんてアホなことは初めからできないのです。

 

 お酒もそれと同じです。死ぬかもしれないという恐怖が頭をよぎったその瞬間に、本当に血中アルコール濃度が急上昇して死んでしまうのではないかと思います。それが怖いので、私はあんなアホなことはもうしないつもりです。

 あのときに「死ぬよ」と教えてくれて、アホな飲酒をやめるきっかけを与えてくれた知人には本当に感謝しています。死ぬ可能性を知っても知らなくても、いつまでも続けていたら絶対にいずれは死んでしまうような行為でしたから……。

 

 この2つのエピソードから、私は、知るということは人を不可逆的に変える力があるんだなあとしみじみ思います。成長とか、そういう言葉でも表せるのかもしれません。

 とは言え、ジャングルジムのてっぺんに立つことに関しては、いつかまたチャレンジしてみたいという気持ちが実のところ拭いきれません。仮に落ちてもきっとまあ死にはしないでしょう。しかしこの楽観的観測も、知ることによって今後覆るかもしれませんが。