海苔ささみピザパン

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翼よ!あれが通天閣の灯だ

 最近、道行く人が私を見ているような気がしていた。実際私は、先天性の障害によって左腕が不自由で、挙動不審で、声も少し変だ。だから知らない人も私を気持ち悪いと思って見ているのかもしれない。そう思った。

 昔からの友人には、実際君は目立っているよ、と笑いながら言われた。

 しばらくそのことで悩んだ。外に出るのが嫌になりかけもした。しかし、思い返してみれば、私が奇異の視線に晒されているのは何もここ最近だけにとどまらないじゃないか?物心ついた頃からずっと、みんなが当たり前にできることができなかった。その都度、疎外され、外野から見学した。そして、自分の納得できる範囲で、改善可能なものは改め、そうでないものは開き直ってやり過ごしてきたではないか?

 私は何のために都会に出てきたのか?たった今私をちらと見た、ような気がする、その見ず知らずの人。それが何だというのか。もうとっくにすれ違って遠くに行き、顔も覚えていない。この土地では、私は、どこにでも行けるのだった。私は通行人Aになりたくてここに来た。あの人が実際に私を見たとして、そして「キモ」とでも思ったとして、それでもまだなお私の匿名性は守られているのだ。

 嬉しくなった。街には無数の灯がともっている。私はその辺に大量にいる知らねえやつらが本当に死ぬほどどうでも良いと思った。明日からも、私たちは行きたいところへ行くはずだ。